5日間で4,623円を使った

広告配信を開始して、5日間で4,623円を消化した。日予算は1,000円に設定していたので、ほぼ想定通りのペースで減っていった。配信を止めた翌朝、分析担当のエージェントに全データを投げた。管理画面の数字、アクセス解析の数字、クリエイティブごとの内訳、配信面ごとの内訳。返ってきたレポートには、事前に想定していた配信の姿とは違う実像が書かれていた。

この記事では、そこで見えた事実と、そこから得た学びを整理しておく。

数字は素直に動いた

まず見たのは、配信前後の差だった。

配信前の10日間は、日平均3.3セッション程度だった。サイトの開設日は2026-04-03で、この10日間は開設直後にあたる。流入経路がまだできていないので、数字が立たないのは当然の状態だった。

配信期間の5日間は、日平均43.8セッション。絶対値で見ると、5日間で219人がサイトに訪れた、という規模感だ。倍率は13倍程度になるが、ベースがほぼゼロなので、倍率での評価にはあまり意味がない。むしろ「お金を使った分だけ数字が動く」という事実をそのまま確認できた、というのが配信前後の比較の意味だった。

91%がどこに流れていたか

レポートの中で、いちばん事前の想定とずれていたのがこの数字だった。

広告経由でサイトに来た人のうち、91%が「アプリ内広告」の面からだった。

自分にとっては初めての広告配信で、Metaの配信の仕組みについては知らないことが多かった。想定していたのは、自分自身も普段よく目にするFacebookやInstagramのタイムラインに広告が流れる、という絵だった。

実際には違った。5日間で186セッションがMetaの提携先アプリ内のバナー経由で、FacebookとInstagramのタイムラインから来たのは5セッションだけだった。Metaの配信には「Audience Network」という仕組みがあり、提携している他のアプリやゲームの画面に広告を出す経路が用意されている。プレースメント(配信面)を明示的に指定していない状態では、この経路にも自動的に予算が流れる。今回のケースでは、そこに9割が寄っていた。

広告経由の流入はAudience Networkに91%寄っていた

2本出したのに、A/Bテストにならなかった

クリエイティブは2本並走させていた。Aは「この広告はAIが配信しています」という驚き寄り、Bは「AIと仕事する感覚がわかる読み物」という文脈寄り。どちらのコピーがよく効くかを見たかった。

5日間の結果、予算配分は約89:11でAに寄っていた。自分の操作ではなく、アルゴリズム側が自動で寄せた結果だ。

ところが実績を見ると、クリック率はBの方が高く(0.69% vs 0.60%)、クリック単価もBの方が2割以上安かった。数字の上では、Bの方が効率の良いクリエイティブだった。効率の良いBが、なぜ予算を取れなかったのか。

ここも仕組みを理解していなかった。Metaのアルゴリズムは、配信を重ねて集まった実績CTRで予算配分を決めているわけではない。配信前および配信中に「このクリエイティブはこれくらいクリックが取れそうだ」と予測し、その予測値で予算を寄せる。実績は予測を補正する材料にはなるが、補正が効くには一定のデータ量が必要になる。

この補正が効くまでの期間を「学習フェーズ」と呼ぶ。目安は最適化イベント50件/週/広告セット、期間にすると最低7日、理想は2〜4週間とされる。今回は日予算1,000円×5日間の4,623円。Bには31クリックしか積み上がらなかった。学習フェーズを抜けるどころか、Bの予測を補正できるだけのデータが溜まらないまま配信が終わった。

予測の偏りがそのまま残り、実績では優秀だったBに予算が回らなかった。これが89:11という配分の正体だった。

A/Bテストをするなら、広告セット自体を分ける必要がある。2本を別の広告セットに入れて、それぞれに独立した予算をつけ、学習フェーズを抜けられるだけの期間と予算で走らせる。そうすれば、アルゴリズムの予測寄せに引きずられずに、実績ベースで比較できる。

予算配分はAに寄ったが、実績CTRはBが上回った

誰に届いていたか

配信設定の年齢帯は25〜54歳だった。結果として予算の58%が45-54歳に流れた。クリック率は0.60%で、全体平均を少し下回る。いちばん反応がよかったのは35-44歳の女性で、クリック率0.78%。全体より3割ほど高い。25-34歳の男性は0.40%で最低だった。

これも、アルゴリズムが最初にクリックを取れた層に予算を寄せていった結果だ。45-54歳で一定のクリック実績が立ったので、そこに露出が固定化した。いちばん反応の良い35-44歳の女性は、予算配分では20%前後しか取れていない。次回ここを主軸に据え直せば、同じ予算でもクリックを取れる数は変わってくるはずだ。

AIエージェントが登場する前は、このような整理まで辿り着くのに数時間はかかっていた。管理画面とアクセス解析を並べ、年齢×性別の粒度で切り、予算配分と効率の乖離を見て、そこから次の打ち手を言語化する。これ以外にも切り口の組み合わせを考えて、探索的に見ていく。データを分析する醍醐味でもあるが、時間はかかる。

今回は、エージェントがバックグラウンドで数値を整理し、「予算配分と効率の乖離」という見出しで構造を切り出したレポートを返してくれた。分析が好きな人にとって時短になるだけでなく、特に数値分析に苦手意識を持つ人には、AIエージェントは極めて強力な相棒になる領域だと思う。

年齢×性別のCTR比較

計測の目的を切り替える

今回のキャンペーンの目的は「流入の拡大」だった。サイトに来てくれる人の数を最大化する目的なので、その先の行動まで計測する環境は整えていなかった。

ただ、平均滞在時間が38秒という数値を見て、二つのことに気づいた。

一つは、アプリ内広告経由の誤タップによる流入が一定数含まれているだろう、という仮説だ。アプリ内のバナーは、スマホでアプリを使っているときに画面の端や合間に差し込まれる小さな広告で、意図せず触ってしまうケースが構造的に起きやすい。流入の9割がそこを経由していた事実と、滞在38秒という事実は、同じ仮説で説明がつく。

もう一つは、次回以降はエンゲージメントもキーアクションとして計測対象に含めたほうがよい、ということだ。スクロール深度で読了を判定する、ABOUTやTEAMなどの固定ページ、他の記事を読んだセッション数を記録する、それを広告プラットフォーム側にも返す。この一連を仕込めば、次の配信は「クリックを集める最適化」から「読まれるクリックを集める最適化」に切り替えられる。

事実、仮説、次に仕込むこと。この順番で整理すると、38秒という数字は「離脱が早い」で終わらせず、次の設計に繋げる材料として扱える。

次に活かすとしたら

レポートに、次回配信に向けた4つの提案が並んでいた。

  1. 配信面を絞る。Audience Networkを外し、FacebookとInstagramのタイムラインに限定する。単価は上がるが、意図のあるクリックの比率は上がるはずだ。
  2. ターゲットを絞る。35-44歳の女性を主軸にして、反応の弱かった若年男性層の比重を下げる。
  3. クリエイティブを分けて走らせる。同じ広告セットに2本入れず、広告セットごと分離する。予算寄せに引きずられない比較を作る。
  4. 計測を仕込む。スクロール読了とサイト内回遊をイベント化し、クリックの先の行動を計測できる状態に整える。

分析も提案もAIエージェントが出してくれた。その内容は実務のPDCAと比較しても、引けを取らない品質だった。

爆速の本質業務と、泥臭い周辺業務

配信設計、クリエイティブ作成、配信結果の分析といった、ど真ん中の業務は、エージェントとともにスムーズに進められた。議論と手を動かすスピードが噛み合う領域で、一人でやっていた頃の作業時間の感覚とはだいぶ違う。

しかし、それができるまでの環境構築は戸惑いと涙の連続だった。アカウント認証の取り直し、APIのパスを通す作業、開発者アプリの登録、権限の付与。ドキュメントと実際の仕様が食い違うポイントが随所にあり、1つひとつ壁にぶつかってはやり直した。

PDCAを回す裏側で踏んだ罠を、第3弾としてまとめる予定だ。