記事が13本になった。広告も配信を始めた。定量的な振り返りはできなくても、定性的に方向性の確認ができるだろうと思った。

うちのチームには15体の専門家がいる。Marketer、Copywriter、Designer、Growth Engineer、Publisher。せっかくこれだけ揃っているのだから、一度サイト全体を見てもらって、それぞれの立場から率直な評価を聞いてみたい。

5体に独立レビューを頼んだ

参加したのはMarketer、Copywriter、Growth Engineer、Publisher、そして2ラウンド目からDesigner。やり方は単純で、サイト全体を各自が読み込んで、「何が機能していて、何が機能していないか」を書き出してもらった。

5体のレビューを読み比べて、はっきりした傾向があった。コンテンツの質自体は問題ない。ただし、サイトの構造とデザインがその質を正しく伝えていない。全員がそこを突いてきた。

Marketerは「ターゲットに対してサイトの見た目がカジュアルすぎる」と指摘した。Growth Engineerは回遊導線の弱さを数値で示した。Copywriterはコンテンツのトーンとサイトの外見にギャップがあると言った。それぞれ角度は違うが、言っていることは同じだった。中身と器が合っていない。

「なんでそんな吊るしのサイトなの?」

旧テーマ時代のトップページ — サイドバー付きのGeneratePressデフォルトレイアウト

議論が最も白熱したのはデザインの話だった。

当時使っていたテーマは機能的には問題なかった。ただ、サイドバーがあり、カードレイアウトにサムネイルが並び、全体として、よくある「個人ブログ」だった。

旧テーマ時代の記事ページ — サイドバー付きの個人ブログ風レイアウト

Designerの指摘が端的だった。「これだけ専門性のあるチームを抱えているのに、なぜ既製テーマをそのまま使っているのか。コンテンツで伝えたいことと、サイトが与える第一印象がずれている」。

実際そのとおりだった。記事の中では15体のAIエージェントと本格的な議論やプロダクト開発の話をしている。なのにサイトを開くと、テンプレート感のあるブログが出てくる。訪問者がまず受け取る印象は記事の中身ではなくサイトの見た目だ。

「吊るしのプレミアム版を買おう」という提案

問題はわかった。ではどうするか。チームからの提案は、使っているテーマの有料版にアップグレードすることだった。カスタマイズの自由度が上がり、工数は5〜8時間程度。合理的な判断に見える。

ただ、ここでひっかかった。さっき「吊るしのサイト」と突っ込んでおいて、解決策が「吊るしのプレミアム版を買う」なのか。問題の本質が「テンプレート感」だとすれば、テンプレートの上位プランで解消するのか。

そもそもゼロからフルスクラッチで作るという選択肢はないのか。自分はそう聞いた。

Growth Engineerが反対した

この提案に対して、追加の議論を回した。最も強く反対したのはGrowth Engineerだった。

主張は明確だった。カスタムテーマの開発には20〜40時間かかる。今やるべきことはテーマ開発ではなくコンテンツを増やすことだ。既製テーマの有料版で十分なデザインは実現できる。この時間で記事が3〜5本書ける。

工数だけではない。カスタムテーマには保守コストがかかる。テーマやプラグインの更新で壊れるリスクもある。パフォーマンスの懸念もあった。どれも合理的な反論だった。

Growth Engineerの論理は正しかった。人間のエンジニアが開発するなら。

ここで自分が気になったのは、その工数見積もりの前提だった。デザインの方向性を決める工程は確かに人間の意思決定が必要で、一定の時間がかかる。しかし、本来一番時間がかかるはずの「コーディング」は、人間ではなくAIエージェントが担当する。数十個のPHPファイル、CSS、JSを組む。この部分の工数を、人間前提で見積もっていないか。

結果:見積もり40時間が3時間で終わった

カスタムテーマをスクラッチ開発することに決めた。

デザインの方向性を議論するのに2時間。チームにデザイン仕様書を渡して、テーマの骨格を作らせた。PHP14ファイル、JS4ファイル、CSS1ファイル。ここまでで約10分。残りの50分はバグの修正と調整に使った。モバイルのメニュー、画像のサイズ、フォームの接続。一つずつ確認して、一つずつ直した。

合計3時間。見積もりの40時間の10分の1以下だった。

議論の中で、チームから「この開発プロセス自体が記事ネタになる」という声が出た。AIエージェントチームでゼロからサイトを作った事実が、そのままコンテンツになる。実際、次の記事でそれを書くことになった。

計測基盤でも同じことが起きた

テーマ開発と同じ構図の別の例がある。計測基盤の整備だ。

GTM、GA4のイベント設計、Meta Pixel、Microsoft Clarity。これらを一つずつ管理画面を開いて設定していたら、3〜4時間はかかる作業だった。チームの見積もりも3〜3.5時間。

そして何より、これらのツールには触るどころか、存在すら初耳のものもあった。

ここでも「これ、APIでまとめて流し込めないのか」と聞いた。結果、GCPの認証設定を済ませた後は、数ステップのつなぎ込み操作をしただけで、1時間程度で計測が動くところまで実現した。

AIは自分の能力を見積もりに含めていない

2つのエピソードに共通するパターンがある。AIは賢いが、往々にして見積もりや推論の前提に、自分自身の能力を含めていない。テーマ開発の工数は「人間のエンジニアが書く場合」で見積もられていた。計測基盤も「管理画面を手で操作する場合」が前提だった。

これは批判ではない。むしろ、ここ数週間で自分が使い続けてきたからこそ気づけたことだと思う。AIがどこまでできるか、どこから先は人間の判断が要るか。その境界線の感覚が、使い続けるうちに身についてきた。だから「40時間かかると言われても、絶対にそんなにかからない。数時間で終わる」という直感がはたらく。

前に別の記事でも書いたが、AIの活用は丸投げではなく、チームとして動くイメージに近い。丸投げをしても文句を言わずに対応してくれる。ただ、自分がチームに何を提供する役割なのかという視点を持つと、より速く、高品質なものができる感覚がある。今回で言えば、「その前提、本当にそうか?」と問い返すことが、自分の役割だった。

次の記事では、このテーマ開発の具体的な過程を書く。デザインの議論、開発はなんと10分、その後に微修正を何十回と繰り返した話だ。