今日のセッションで、また整理が始まった。エージェントに渡している作業メモが130行になっていた。読み込むたびに重い。半分に削った。

これを「几帳面」と呼ぶ人もいる。自分でも長年そう思っていた。でも今日、確信に変わった。整理癖は、AIエージェントを動かす文脈において、明確な競争優位だ。

散らかったコンテキストは、エージェントの精度を落とす

AIエージェントは、渡された情報をそのまま読む。余計な情報があれば、それも読む。古い情報があれば、それも参照する。「ここは無視して」という判断を、エージェント側に期待するのは危うい。

作業メモの130行には、すでに解決済みの問題、古い決定事項、三度同じことが書かれているセクションが混在していた。削る前と後で、セッション開始時のエージェントの読み込みが体感で変わった。質問の精度が上がった。ズレた提案が減った。

「雑に渡して魔法のように仕上がる」は、残念ながら幻想だ。AIは文脈が整理されているほど精度が上がる。これはシステムの仕様であって、AIの能力の話ではない。

「安定した手順」と「変わり続ける状態」を分ける

今日気づいたのは、作業メモに書いてはいけないことがある、ということだった。

投稿の手順を作業メモに書いていた。「WordPressに投稿するときはこの順番で」という内容だ。でもこれは毎回変わらない。状態ではなく、手順だ。プロジェクトの手順書に移動した。

作業メモには「今どこにいるか」だけを書く。手順書には「変わらないルール・知識・過去のハマりポイント」を書く。この分離が機能すると、セッションをまたいでもエージェントの文脈理解が劣化しない。作業メモは常に軽く、最新で、読めば今日何をすべきかがわかる状態を保つ。

(過去にハマったポイントも同じで、頭の中にしか存在しない暗黙知は手順書に書き出した。次回から同じ罠を踏まない。)

フォルダが散らかると、エージェントが迷う

今日、フォルダを整理した。レビュー用の一時ファイルが作業フォルダに残っていた。過去の議論ファイルがプロジェクト直下に散らかっていた。これらを削除・集約した。

一見すると地味な作業だ。でも、エージェントにコンテキストを渡すとき、「このフォルダを参照して」という指示の精度が変わる。余分なファイルがあれば、エージェントはそれも処理しようとする。ノイズが増える。

整理されたフォルダ構成は、エージェントへの「無言の指示」だ。「ここにあるものが今必要なものだ」という構造が、言葉にしなくても伝わる。

「手段がある状態」を作るのも整理の仕事

今日、エージェント全員に「ウェブを調べる能力」を追加した。15体分。

以前は調べる手段を持っていないエージェントがいた。「調べられるのに調べなかった」より「手段がある」方が常にいい、という判断で一括追加した。エージェントの装備を揃えることも、整理の一形態だ。

道具が揃っていて、役割が明確で、情報が整理されている。この状態がエージェントチームの「パフォーマンスが出る条件」だ。人間のチームと同じ話だが、エージェントの場合はその影響がより直接的に出る。なぜなら、人間は「察する」が、エージェントは察しない。

整理癖という本能が、たまたまAIと合っていた

散らかっていることがストレスだ。ファイルが増えたら削りたくなる。手順が頭の中にあったら文書化したくなる。役割が曖昧だったら定義したくなる。これは自分の特性で、長い間「几帳面すぎる」と受け取られることもあった。

AIエージェントを動かすようになって、この本能が直接パフォーマンスに影響することがわかった。整理するたびに、エージェントの返答が良くなる。因果関係が明確だ。

「整理して何になるの」という問いへの答えが、ようやく数値化できるようになった時代だと思っている。作業メモを65行に削った日の午後、エージェントは一度もズレた提案を返してこなかった。

整理が苦手な人に「整理しましょう」と言いたいわけではない。自分の場合、この本能がたまたまAIエージェント運用と相性が良かった、という話だ。自分の特性がどこで活きるかは、やってみないとわからない。